自己容量方式は、検出回路のグラウンドに対する電極の見かけの静電容量を測定します。相互容量方式は、送信電極(TX)と受信電極(RX)の間の結合を測定します。 どちらを選ぶかは、実機に組み込んだ積層構成で必要な操作が成立することを確認して判断してください。自己容量方式をボタン、相互容量方式を画面と結び付けて選ぶものではありません。
方式名だけで、感度の高さ、コストの低さ、防水状態での動作が保証されるわけではありません。OEM向けのカスタム静電容量式タッチパネルの開発では、同じ機能、筐体、電源状態、受入基準を用いて、コントローラーが対応する構成を比較してください。
- それぞれの方式が測定するもの
- 六つの技術的観点で比較する
- 電極形状と配線はどのように異なるか
- 水と近傍のグラウンドが変化させるもの
- ボタンと座標センサーでの各方式の使い方
- コントローラー担当者に確認すべき事項
- 同じ固定機能キーの操作課題で両方式を比較する
- よくある質問
- 二つのキーを組み合わせたショートカットには相互容量方式が必要ですか。
- 既存の電極パターンを別のコントローラーで再利用できますか。
- 一つのコントローラーで両方の検出方式を使用できますか。
- タッチ時の未加工の差分値が最も大きい設計が優れていますか。
- RFQでは「手袋で操作可能」の代わりに何を指定すべきですか。
- コントローラーを選定する前に、何をレビューできますか。
- 異なる検出方式を用いた見積もりは、どのように比較すべきですか。
- 設計レビューを依頼する
それぞれの方式が測定するもの
自己容量方式は、グラウンドを基準とする電極の負荷を捉えます。相互容量方式は、定義されたTX–RX間の結合経路を捉えます。
Microchipの自己容量モデルには、センサー容量、寄生容量、グラウンドへのリターン経路の容量が含まれます。指が加わるとリターン経路が追加され、見かけの静電容量が増加します。ローカル回路グラウンドは必ずしも大地に接続されていないため、電池駆動時と外部接続がある構成では、測定条件は同等ではありません。
Microchipの相互容量モデルでは、指による二つの競合する作用が説明されています。一つは電極間の結合が追加される作用、もう一つは使用者を通るリターン経路へ電荷が分流する作用です。後者は通常、測定される相互結合を減少させます。したがって、両方の電極を定義しても、使用者、グラウンド、電源構成の影響がなくなるわけではありません。
非タッチ時とタッチ時の測定値、コントローラーにおける差分値(デルタ)の定義、信号の極性を記録してください。物理的な静電容量の減少が、必ず負の差分値として表示されると考えてはいけません。コントローラーは静電容量を独自の測定表現に変換します。TIによる変換カウント値の説明は、ゲインとオフセットの設定も記録に含める必要がある理由を示しています。
六つの技術的観点で比較する
この比較は、設計に必要な根拠を明確にするために用いてください。あらゆる用途で優れる方式を決めるためのものではありません。以下の違いは、前述の測定モデルとTIの検出アーキテクチャに関するガイダンスに基づいています。
| 技術的観点 | 自己容量方式 | 相互容量方式 |
|---|---|---|
| 測定する量 | 検出電極と回路グラウンドの間の見かけの静電容量。 | 選択したTXとRXの組み合わせの間の結合。 |
| 電極の関係 | 個別のキーには一つの検出パッドを使用できます。キーを個別に検出するには、チャンネルの割り当てが必要です。 | キーはTX–RXの相互作用領域を利用します。複数のノードで電極を共有する場合があります。 |
| 配線と寄生成分 | パッド、配線、コネクター、周囲の導体が、負荷と不要な感度の要因になります。 | 意図しないTX–RX間の結合が、目的のノードの結合に加わります。TX/RXの対グラウンド負荷も引き続き重要です。 |
| グラウンドと水の経路 | 使用者のリターン経路の結合や、液体が形成する接続によって測定値が変化する場合があります。 | 液体が電極間の結合を変化させたり、タッチに似たリターン経路を形成したりする場合があります。 |
| コントローラーの対応範囲 | 検出チャンネル、入力負荷の上限、シールドの選択肢、同時押しの処理ロジックを確認します。 | TX/RXの割り当て、対応ノード数、スキャンのタイミング、対応する入力排除機能を確認します。 |
| 検証方法 | 押下、保持、解放の各段階で、各キーの信号と隣接キーの不要な応答を記録します。 | 同じイベントと条件で、各ノードと共有電極間の相互作用を記録します。 |
最後の二行はレビュー上の要求事項です。デバイスファミリー全体の機能一覧を承認の根拠とするのではなく、実際の構成に対する回答と証拠を入手してください。
電極形状と配線はどのように異なるか
使用者が行う操作は同じに保ちつつ、各方式には、そのコントローラーに適した形状を使用してください。アイコンが同じでも、銅箔パターンまで同じにする必要はありません。
説明用の例として、電源、モード、増加、減少の四つのキーを備えるパネルを考えます。アイコンの位置、カバーの積層構成、筐体、動作要件は一定にします。同じ許容占有領域の中で、独立した検出パッドとTX–RXレイアウトを比較してください。見かけ上比較しやすくするためだけに、両方の候補へ同一の電極パターンを流用させないでください。
相互容量センサーでは、TX–RX間隔や櫛歯状の組み合わせ方がカバーと相互に影響します。Microchipのタッチカバーに関するガイダンスでは、カバーによる距離が増すと結合が変わり、有効なタッチ信号を維持するために必要な形状も変わることが説明されています。カバーのない基板ではなく、指定した積層構成を介して候補レイアウトを確認してください。
図1 — 自己容量方式の固定機能キー:説明用の模式図記述。 固定されたアイコンの下に一つの検出パッドがあり、測定チャンネルへ接続されています。簡略化した断面では、カバー、指との結合、ローカル回路グラウンド、使用者と周囲の環境を通る容量性リターン経路を示します。大地とローカルグラウンドは別々に表示します。
図2 — 相互容量方式の固定機能キー:説明用の模式図記述。 互いに接触しない独立したTX導体とRX導体が、同じアイコンの占有領域に配置されています。向かい合うエッジ、または櫛歯状に組み合わされたエッジが検出領域を形成します。断面では、カバーを介した結合と、指に関係するリターン経路を示します。これらは概念的なレイアウトであり、製品写真や製造寸法ではありません。
コントローラーまでの経路全体を確認してください。TIの配線に関するガイダンスでは、配線とコネクターを、電気的影響のない単なる延長ではなく、電気特性に寄与する要素として扱っています。相互容量方式では、キーの外側でTXとRXが意図せず近接している箇所と、各導体の対グラウンド負荷の両方を調べてください。
候補の電極パターンを、実装時のテール配線の経路、隣接信号、取り付け部の導体と照らし合わせて比較してください。電極の改訂版、ピン割り当て、コネクター、配線上の制約、測定した負荷または校正状態を保管します。レイアウトの変更は、比較記録から追跡できる状態にしてください。
水と近傍のグラウンドが変化させるもの
水への耐性は、測定方式の名称だけではなく、形成される電気的経路によって決まります。まず、ローカル回路グラウンド、保護接地、電気的に浮いた金属部品、駆動シールドを区別してください。
どちらの測定モデルにも、使用者と機器を通るリターン結合が含まれます。想定する電池またはアダプターの構成、シャーシの接続、実際の使用を想定した保持・取り扱い状態で試験してください。デバッグ用ケーブルや通信ケーブルが接続されているかどうかも記録します。
TIの湿気に関する説明では、孤立した水滴が相互結合を増加させ、通常のタッチとは逆方向の変化を生じさせる場合があるとされています。一方、液体が近傍のグラウンド基準の導体まで広がると、どちらの方式でもタッチと同じ方向の変化が生じる場合があります。したがって、孤立した水滴によるデモだけでは、液体がこぼれた場合の性能は立証できません。
孤立した水滴、隣接キーにまたがる液膜、実際のベゼルまたはグラウンドに接続された領域へ向かう液体経路を比較してください。液体の種類、配置、量、グラウンド接続、センサー測定値、ホスト側のイベントを記録します。各条件で、動作継続、入力の排除、一時的な操作ロックのどれが必要かを明示してください。
駆動シールドは、単にグラウンドへ接続した銅箔ではありません。Microchipの駆動シールドに関するガイダンスでは、駆動波形の違いが説明され、シールドとの過度な結合が校正や信号品質を損なうおそれがあると注意されています。採用する前に、対応するハードウェア、波形、負荷、形状を確認してください。
状態の詳細な定義には、水と手袋に対応する調整ガイドを参照してください。筐体の浸水防止に関する受入判定と、濡れた状態でのタッチ動作に関する受入判定は分けます。一方から他方を推定せず、それぞれに証拠を求めてください。
ボタンと座標センサーでの各方式の使い方
インターフェースが固定コマンドを出力するか、座標を出力するかは、検出方式だけでは決まりません。適切なハードウェアと処理があれば、どちらの方式も固定機能の操作に対応できます。
個別に測定する自己容量キーと、行・列で構成された自己容量マトリクスは、同じアーキテクチャではありません。後者では、複数の行と列が同時にアクティブになると、交点を一意に特定できない場合があります。相互容量マトリクスは個々のTX–RXノードを測定するため、この特定の曖昧さに対処できます。ただし、要求されるすべてのマルチタッチ動作を保証するものではありません。TIのマトリクスに関する説明では、この違いが示されています。
固定機能キーでは、押下、保持、解放、許可するキーの組み合わせ、抑制処理、ホスト側のイベントを規定してください。投影型静電容量式の座標センサーでは、位置、端部、追跡、タッチ数、表示との対応付けを別途規定します。座標のデモを、特定のコマンドが安全に処理される証拠として受け入れてはいけません。通常のタッチキーを、必要な安全機能の代わりに使用してはいけません。
コントローラー担当者に確認すべき事項
電極パターンを確定する前に、使用するコントローラー構成そのものを承認してください。対応範囲は、選択したピン、測定モード、ソフトウェア、必要な動作状態を含む必要があります。デバイスファミリーの販促説明だけでは不十分です。
TIのDesign Centerドキュメントには、設定可能なモード、ピン割り当て、スキャン、診断情報へのアクセスが示されています。これらは確認すべき事項の例として扱ってください。すべてのコントローラーに約束される機能ではありません。
| プロジェクトの条件 | コントローラー担当者への質問 | 保管すべき証拠 |
|---|---|---|
| コントローラーが選定済み | このデバイス、パッケージ、ソフトウェアは、提案された電極とモードに対応していますか。 | デバイスの識別情報、対応する構成、ピン割り当て。 |
| テール配線が長い、または配線が高密度 | 負荷、抵抗、セトリング、結合にはどのような制限がありますか。 | レイアウトレビュー、校正とスキャンの証拠。 |
| 金属ベゼルがある、または電源構成が変わる | 基準、シールド、非アクティブ電極について、どの状態に対応していますか。 | 各状態の回路図と設定。 |
| 水、または承認された手袋への対応が必要 | 目標は動作継続、入力の排除、操作ロックのどれですか。また、復帰をどのように処理しますか。 | 状態要件と、それに対応する試験ログ。 |
| 同時押しが必要 | どの抑制ルールが動作し、必要なすべての組み合わせを通知できますか。 | 組み合わせと解放順序の試験。 |
| 電力または応答時間の制約が厳しい | スキャン全体のスケジュール、ウェイクアップ動作、エンドツーエンドの遅延はどうなりますか。 | 時刻を記録したホスト側イベントと、実測した消費電力。 |
| 生産移管を予定している | 調整ファイル、書き込み、診断、更新、変更承認は誰が担当しますか。 | 版管理されたリリース一式と責任分担。 |
カバー担当者には誘電体の積層構成と公差を、センサー担当者には形状とテール配線を、コントローラーハードウェア担当者にはピンと負荷の制限を、ファームウェア担当者にはスキャン、校正、イベント処理を割り当ててください。ディスプレイの統合は電気・光学担当者に、コマンドの解釈はホスト担当者に割り当てます。それらの相互作用を誰が検証するかも明確にしてください。カスタム静電容量式タッチパネル設計ガイドでは、より広い範囲の引き継ぎの枠組みを示しています。
同じ固定機能キーの操作課題で両方式を比較する
実機組み込み状態で同じ受入計画を満たし、余裕が記録で裏付けられ、実装の負担を管理できる候補を選択してください。未加工のカウント値の変化が大きいからといって、異なるプラットフォーム間の性能順位を決めることはできません。
四つのキーの例は、比較手順を説明するためのものであり、実際の試験結果を示すものではありません。外部要件は一定に保ちながら、方式ごとに適した電極と調整を認め、その違いをすべて記録してください。想定する最も弱い入力と、現実的な範囲で最も大きな妨害が生じる動作状態を含めます。
TIのSNR測定ツールでは、フィルタリングとデータ収集の選択項目を確認できます。一方、ゲインに関するドキュメントは、設定によって測定値のスケールが変化することを示しています。各結果とともに、ノイズの定義、取得時間窓、ゲイン、フィルタリング、ベースライン、しきい値を記録してください。異なる設定のカウント値ではなく、検出と入力排除に利用できる余裕を、応答時間と併せて比較します。
| 両候補で実施する試験 | 判断のための証拠 | 自己容量方式の結果 | 相互容量方式の結果 |
|---|---|---|---|
| 各キーでの乾燥時、および承認された手袋での操作 | 検出漏れ、誤イベント、押下・解放のタイミング。 | ||
| 必要なキーの組み合わせと解放順序 | 独立した通知と、正しいホストコマンド。 | ||
| 実装状態での電源、ディスプレイ、ケーブルの状態 | ノイズ、ベースラインの移動、しきい値に対する余裕。 | ||
| 孤立した液体、キー間にまたがる液膜、関連するグラウンド経路 | 要求された動作または入力排除。意図しないコマンドが発生しないこと。 | ||
| タッチ中または濡れた状態での起動と、その後の指や液体の除去 | 合意した起動時処理と、誤イベントを生じない復帰。 | ||
| カバー、接着、テール配線の許容ばらつき | 文書化された組み立てバリエーション間で再現性のある動作。 |
説明用の記録テンプレートです。空欄は実測値を記入するためのものであり、合格を意味しません。
試験前に、イベントの許容限界、時間の制限、繰り返し回数、サンプルの対象範囲、復帰基準を合意してください。取得可能な場合は生データまたは診断データを保存し、コントローラーの状態をホスト側のタイムスタンプと対応付けます。センサー信号が良好であることだけでは、意図したコマンドをホストが実行した、または拒否した証拠にはなりません。
採用したアーキテクチャ、却下した代替案、ハードウェアとファームウェアの改訂版、観測された最も厳しい条件、残る制約、承認責任者を記録してください。両候補が合格した場合は、検出原理にコスト上の優位性を割り当てるのではなく、供給範囲全体と保守上の責任を比較します。
よくある質問
以下の質問は、アーキテクチャの比較を、レビュー可能な仕様へ落とし込むために役立ちます。
二つのキーを組み合わせたショートカットには相互容量方式が必要ですか。
必ずしも必要ではありません。提案されたセンサーレイアウト、コントローラー、抑制設定で、両方のキーが独立して通知されることを実演で確認してください。二通りの解放順序を試験し、時間的に重なった押下をホストがどのように解釈するかを確認します。
既存の電極パターンを別のコントローラーで再利用できますか。
承認済みの代替品ではなく、候補として扱ってください。新しいコントローラーの担当者に、ピン割り当て、負荷、配線、シールド駆動、スキャンのタイミングを確認してもらいます。その後、変更していない電極パターンをリリースする前に、実機組み込み状態での検証を繰り返してください。
一つのコントローラーで両方の検出方式を使用できますか。
対応するプラットフォームもあります。TIは、一つのCapTIvate設計の中で自己容量センサーと相互容量センサーを使用する構成を文書化しています。共有リソース、スキャンのスケジュール、診断情報へのアクセスを含め、実際に使用するデバイスとソフトウェアバージョンでの対応を確認してください。
タッチ時の未加工の差分値が最も大きい設計が優れていますか。
その数値だけでは判断できません。条件をそろえ、それぞれの設計について、その設計自身のノイズとしきい値に対して評価してください。ゲイン、フィルタリング、サンプリング、応答時間の設定を結果とともに記録し、大きなカウント値を、利用できる余裕の大きさと取り違えないようにします。
RFQでは「手袋で操作可能」の代わりに何を指定すべきですか。
手袋のメーカーと型番、フィット状態、重ねる枚数や層、状態、必要な操作、受け付ける動作と排除する動作を指定してください。実際のカバーの積層構成と電源構成も含めます。承認は、手袋全般ではなく、文書化されたその組み合わせに対して適用するべきです。
コントローラーを選定する前に、何をレビューできますか。
機能の割り当て、カバーの積層構成、筐体とグラウンドの構成、テール配線の経路、電源モード、環境状態、要求する出力動作を提示してください。これらを用いてコントローラー候補を絞り込みます。電気的制約について合意するまでは、電極パターンを暫定扱いとしてください。
異なる検出方式を用いた見積もりは、どのように比較すべきですか。
物理的なパネル、コントローラーハードウェア、ファームウェア、調整、治具、診断、実機組み込み状態での試験について、同じ範囲での見積もりを求めてください。継続的に発生する費用と、開発・変更にかかる費用を分けます。どちらかの方式が安いと決めつけず、同じ受入計画を満たす提案を比較してください。
設計レビューを依頼する
完成したアイコンだけでなく、明確に定義した操作課題と、その電気的な境界条件を提出してください。
設計レビューをご依頼ください。その際は、キー配置と必要な組み合わせ、カバー・接着剤・筐体の図面、候補の電極ファイル、コントローラーの型番と設定または選定上の制約、テール配線とコネクターの詳細、電源とグラウンドの構成、要求する水・手袋の状態、サンプル数量と年間数量、受入基準をお送りください。センサー、コントローラー、ファームウェア、ディスプレイ、ホスト統合をそれぞれどの当事者が供給するかを明示し、提案範囲を一貫した基準でレビューできるようにしてください。
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