グラフィックオーバーレイの文字や記号を適切に設計するには、収まる最小の文字サイズではなく、実際の操作タスクを出発点にします。すべての言語を実寸で確認し、想定する観察条件でユーザーが何を識別できるかを検証したうえで、管理された版下記録に基づいて各バリエーションを製造にリリースします。表示を正しく印刷できることと、機器に組み込まれた状態でその表示を理解できることは、別々の承認事項です。
本ガイドは、印刷を施した前面の表層を対象とします。「メンブレンパネル」という用語はサプライヤーによって意味が異なるため、注文範囲がグラフィックオーバーレイのみなのか、メンブレンスイッチ一式なのか、機械部品を含むアセンブリなのかを明示してください。印刷されたグラフィックの承認は、電気的な動作やキーの操作感の承認を意味しません。
ユーザー、視距離、照明条件を定める
表示を配置する前に、誰が機器を操作するのか、どの言語を読めるのか、どこに立つ、または座るのかを明確にします。通常の操作に必要な情報と、保守作業専用の情報を分けてください。必要な最大視距離、斜めから見る位置、照明条件、取り付け後のパネルで生じ得る反射を特定します。
手袋を着用して操作する場合は、ボタン単体ではなく一連の操作タスクを確認します。ユーザーに操作部を見つけてもらい、そこへ手を伸ばし、対応するインジケーターを確認してもらいます。手が重要な文字を隠していないか、隣接する操作部が本来の操作対象に見えてしまわないかを観察してください。操作荷重とフィードバックは、機能するアセンブリで別途検証します。
文字と記号を実寸で確認する
寸法が明記された縮尺確認用の基準を付けて、1:1の紙製モックアップを作成します。「ページに合わせる」を使わずに印刷し、基準寸法を実測したうえで、機器で想定する高さと角度にモックアップを配置してください。画面のズーム設定を100%にしても、物理的な寸法の確認には代えられません。
フォントのポイントサイズだけでなく、目に見える文字の高さ、間隔、線の形状、文字を区別するための細部を評価します。I、l、1、またはO、0など、設計に使われている紛らわしい文字を確認対象に含めてください。句読点、小数点記号、単位、文字の上や下に付く記号も調べます。
代表的なユーザーに、ヒントを与えずに操作部を識別してもらいます。ためらい、読み間違い、表示と操作部の対応に関する混乱を記録してください。拡大表示は印刷不良の確認には有用ですが、通常の視認条件で判読できることの証明にはなりません。
紙製モックアップは、レイアウトの問題を初期段階で見つけるためのものです。印刷パネルの判読性は、提案されたフィルム、インク、仕上げ、背景を用いた代表的な印刷サンプルで評価します。機器に組み込んだ状態での確認では、枠による遮蔽、反射、点灯状態も評価対象に加わります。

レイアウトを確定する前に操作パネルの多言語表示を計画する
利用できるスペースを原文の言語で埋め尽くす前に、対象言語の表記をそろえてください。翻訳によって、文字列の幅、行の高さ、許容される改行位置が変わる場合があります。文字数だけでは、物理的な表示領域に文字列が収まるかどうかは判断できません。
翻訳者には、機能の説明と周囲の操作部に関する情報を提供します。各機能について、グラフィックオーバーレイ、画面に表示するメッセージ、取扱説明書で共通する承認済み用語を一つ定めてください。元のレイアウトを維持するためだけに、安全に関わる文言を短縮したり、略語を独自に作ったりしてはいけません。
文字あふれを示す比較例
説明用の例であり、機器向けに承認された表記でも、印刷試験でもありません。 等しい大きさの文字位置が十個ある模式的な枠を仮定します。この意図的に単純化したモデルは、文字あふれを示すためのものです。物理的な幅の計算でも、推奨する表示文字数でもありません。
| バージョン | 説明用の表記 | 文字数 | 模式的な枠での結果 |
|---|---|---|---|
| 英語の原文 | Settings | 8 | 収まり、二文字分の位置が残る |
| ドイツ語訳 | Einstellungen | 13 | 三文字分の位置が不足する |
| 切り捨てによる不具合 | Einstellun | 10文字を表示 | 末尾の「gen」が失われるため、この切り捨ては不合格とする |
製造用版下では、選定した書体、ウェイト、サイズで完全な文字列を比較します。まず、文字領域を広げる、承認された位置で改行する、言語別の配置にする、といった対応を検討してください。短い用語を使うのは、言語面と機能面の承認を得た後に限ります。文字サイズを小さくしたり、間隔を詰めたりする前に、判読性を再評価します。
最も長い文字列だけでなく、最も密な字形や高さのある付加記号も確認してください。右から左へ書く言語のバリエーションでは、文字の方向と混在する数字を明示的に確認します。機械的な配置や、向きが機能に依存する矢印を自動的に左右反転してはいけません。
見た目ではなく機能に基づいて記号を選ぶ
見覚えがあるように見えるアイコンだけでは不十分です。ユーザーが、それによって示される機能を理解できなければなりません。記号の意味を説明する前に、その操作部を操作すると何が起こると思うかをユーザーに尋ねてください。解釈に不確かさが残り、適用される表示要件で許される場合は、簡潔な文言を添えます。
ISO 7000 / IEC 60417の機器用図記号集は、登録された機器用図記号の参照資料です。見慣れたアイコンに似ているかどうかだけでなく、選んだ記号の意味と用途を確認してください。対象の製品と市場に適用される警告、安全、規制上の記号要件については、機器の責任者に確認してもらいます。
記号の識別番号または承認済みの独自参照番号、版下の改訂番号、向き、対応する機能、承認責任者を記録します。管理対象の記号は、その意味と適用要件について権限を持つ担当者の確認を受けずに、意匠を変えたり、左右反転したり、簡略化したりしてはいけません。
細線、抜き文字、コントラストを確認する
実際の版下で最も細い線と最も小さい開口部を、印刷担当者に評価してもらいます。文字部分を印刷する正文字、背景の印刷を抜いて文字を形成する抜き文字、別に印刷する明色の文字を区別してください。これらは製造上、互いに置き換えられるものではありません。
代表的なサンプルで、線の欠け、文字内部の空間のつぶれ、隙間をつなぐインクのブリッジ、縁の乱れ、目に見える見当ずれを確認します。確認に使用したフィルム、印刷工程、インク層構成、仕上げを明記してください。サプライヤーが印刷可能とする最小の細部形状は、すべてのメンブレンパネルに共通する文字サイズでも、機器に組み込んだ状態での判読性の限界値でもありません。
想定する背景と表面仕上げを用い、ユーザーが見る側からコントラストを評価します。照明されるグラフィックでは、該当する周囲照明の下で、表示すべき状態と隠すべき状態を確認してください。誤認が問題になる場面では、色だけに頼ってはいけません。
ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインは、ウェブコンテンツを対象としています。その数値的なコントラスト基準だけで、物理的な印刷パネルの受入限界を定めることはできません。適用される機器の要件と、合意した取り付け状態でのサンプル確認に基づいて判断してください。
言語別バリエーションを改訂管理する
各言語構成を、以前の製造ファイルに対する非公式な編集ではなく、管理されたリリースとして扱います。共通の形状と、言語固有の内容を分けて管理してください。共通の窓、キー位置、記号を変更した場合は、影響を受けるすべてのバリエーションについて影響の確認を行うようにします。
管理された設計マスターファイルには、編集可能なテキストを残します。文言の承認後、必要に応じて文字をアウトライン化するなど、サプライヤーと合意した製造用の派生ファイルを作成してください。書き出した校正データを、承認済みの文字列およびレイアウトと比較します。アウトライン化によって、翻訳、文字の順序、内容の完全性が確認されるわけではありません。
パネルの言語別バージョン管理表
製造にリリースする各バリエーションに一行ずつ使用してください。空欄はプロジェクト記録を記入するためのものであり、記入済みの承認報告書ではありません。
| 市場/言語/バリエーションID | オーバーレイ部品番号/版下改訂番号 | 共通形状/記号セットの改訂番号 | 用語集/翻訳の改訂番号 | 機器構成/取扱説明書の改訂番号 | 校正/サンプルの記録ID | 承認者/日付/リリース状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|
各行を、承認済みの材料、印刷、仕上げ、検査の仕様に関連付けます。印刷された表示がソフトウェアの動作に依存する場合は、ファームウェアの識別情報も含めてください。誰がバリエーションをリリースできるのか、旧版のファイルや在庫をどのように区分・隔離するのかを定めます。一つの翻訳を修正しても、すべてのバリエーションが自動的に製造承認されるわけではありません。
用語承認記録
何を表す言葉なのかが分からないまま承認することを避けるため、機能IDを使います。例えば、アラームを確認済みにする操作と、その警報音を止める操作は、機器の動作を確認せずに同じ操作として扱ってはいけません。
| 機能ID/意図する操作 | 承認済みの原語 | 対象言語/承認済み用語 | 略語または記号のルール | 確認者/改訂番号 |
|---|---|---|---|---|
機器担当チームと連携してレイアウトを承認する
言語面の承認、印刷工程の確認、機器レベルでの受入れを分けてください。言語の確認担当者は意味を、版下と製造の確認担当者は再現性を、機器担当チームは操作部との対応と使用条件を確認します。品質管理または構成管理の担当者が、リリースされた組み合わせを記録します。
サンプルを確認する前に、評価方法と受入基準を合意してください。対象となるユーザー群、操作タスク、観察条件、サンプル構成を明確にします。安全に関わる操作タスクには、機器に適用されるリスク管理と妥当性確認のプロセスを用いてください。目視用のチェックリストは、その代わりにはなりません。
実寸での判読性チェックリスト
該当する各言語と各構成について、この記録を記入します。合格、要修正、該当なしのいずれかを、理由および根拠とともに記録してください。モックアップの結果は、印刷サンプルおよび機器に組み込んだ状態での結果と分けて管理します。
プロジェクト/機器構成:______
バリエーション/版下改訂番号:______
確認段階/サンプルID/日付:______
ユーザー/操作タスク/合意した受入基準:______
| 確認項目 | 記録する根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 1:1での出力を確認した | 縮尺確認用の基準寸法の測定結果、印刷設定 | |
| 必要な観察位置を網羅した | 距離、取り付け角度、ユーザーの姿勢 | |
| 照明とまぶしさを確認した | 照明条件、反射、該当する点灯状態 | |
| 最も小さい文字と最も密な文字を判読できる | 具体的な表示、ユーザー、読み間違いやためらい | |
| 翻訳が完全で、正しく再現されている | 用語集の改訂番号、アクセント記号、文字の方向、改行 | |
| 単位と似た文字を区別できる | 確認した文字の組み合わせ、句読点、単位 | |
| 記号と操作部が正しく対応している | 期待される機能、ユーザーの解釈、機器担当者による確認 | |
| 必要な場合に手袋着用時の操作手順を確認した | 手袋の種類、手を伸ばす経路、手による遮蔽、隣接する操作部 | |
| 細い線と抜き文字の隙間が再現されている | サンプル構成、観察された不良 | |
| 組み立てによって重要なグラフィックが隠れていない | 枠、窓、エンボス加工、位置合わせに関する観察結果 | |
| 所定の処理を行った該当サンプルを確認した | 合意した清掃または摩耗の手順、サンプルID、処理前後の結果 | |
| 正しいバリエーションがリリースされた | 部品番号、改訂番号、承認、未解決事項への対応内容 |
確認したサンプル、またはその管理対象の参照情報を保管します。製造リリース前に不一致を解消し、文言、形状、材料、印刷、仕上げを変更した後に、どの確認を繰り返す必要があるかを明確にしてください。
よくある質問
一つの多言語グラフィックオーバーレイで、地域別の個別バージョンを置き換えられますか?
可能なのは、必要なすべての言語が利用可能な領域内で理解でき、判読性を保ち、さらに機器の表示要件がその配置を認める場合に限られます。単に文字が収まるかどうかではなく、複数の表示が競合していないか、操作部との対応が明確かを確認してください。共通レイアウトが過密になる場合は、個別のバリエーションに分ける方が望ましいことがあります。どちらの方法でも、管理された識別と承認が必要です。
翻訳だけの変更でも、新しい治工具が必要ですか?
必ずしも必要ではありません。ただし、切断形状が変わらないからといって、生産の段取り全体が変わらないとは限りません。文字が変わると、印刷用の色分解、マスク、校正、検査用の参照資料に影響する場合があります。リリース前に、影響を受ける項目をサプライヤーに特定してもらってください。文字領域の拡大や表示位置の変更は、エンボス加工やその他の形状にも影響する場合があります。
パネルの表示デザインをご相談ください
OEMパネル向けカスタムグラフィックオーバーレイを必要とするプロジェクトでは、機器、利用可能なパネル領域、必要な言語、観察条件、手袋の使用についてお知らせください。版下や概略レイアウトがある場合は、用語や記号に関する要件とともにご用意ください。
パネルの表示デザインをご相談ください。材料が未選定でも、図面一式がそろっていなくても、相談を始められます。
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